昨年から、知的財産研究所のIIP知財塾で、「共同研究開発を促進するための環境整備」をテーマとする共同研究に関わる機会を得て、経団連の「産学官連携による共同研究の強化に向けて」(2016年2月16日)やイノベーション促進産学官対話会議(文部科学省・経済産業省)の「産学官連携による共同研究強化のためのガイドライン」(2016年11月30日)の公表に至る議論に注目していました。上記ガイドラインには、共同研究契約締結の円滑化のための雛形類の整備が謳われていて、どう具体化されるのかが気になっていたところ、2017年3月末に「大学等における知的財産マネジメント事例に学ぶ共同研究等成果の取扱の在り方に関する調査研究」によって、共同研究契約についての11類型の新しい雛形である「さくらツール」が公表されました。その後、4つのPDFファイルから成る大部の成果報告書も公表されていて、英国知的財産庁の共同研究契約等の雛形であるLambert Toolkitの翻訳や大学等へのヒアリングなどを踏まえてまとめられたことが分かります。
「さくらツール」においては、モデル契約書の類型を選ぶ際の考慮要素も記載されているのですが、契約当事者間で話し合って1つの類型を選ぶのは、利害が絡んで綱引きとなり、実際には難しいのではないかと思います。一方当事者が「さくらツール」のような雛形を横目でにらみつつ、研究開発部門の意向に最も沿う条文を工夫して作成したオリジナルの契約書案を相手方に提示して交渉するのが、手間はかかっても、いい契約書をまとめる近道ではないでしょうか。共同研究の態様は一様ではないので、万能と言えるような共同研究契約の雛形は用意しにくいと思っていましたが、「さくらツール」の登場により、大学側が提示する共同研究契約書雛形から出発するだけではなく、また、研究成果の知的財産の帰属について共有とか別途協議とかを定めるだけではない多様な契約交渉の進め方が期待できると思います。
英国知的財産庁のLambert Toolkitが、2005年に公表された後、2013年に検証報告書が出され、2016年にLambert 2として増補されたように、「さくらツール」も検証や必要に応じた改訂がなされ、長く参照されるようになって欲しいものです。
「さくらツール」においては、モデル契約書の類型を選ぶ際の考慮要素も記載されているのですが、契約当事者間で話し合って1つの類型を選ぶのは、利害が絡んで綱引きとなり、実際には難しいのではないかと思います。一方当事者が「さくらツール」のような雛形を横目でにらみつつ、研究開発部門の意向に最も沿う条文を工夫して作成したオリジナルの契約書案を相手方に提示して交渉するのが、手間はかかっても、いい契約書をまとめる近道ではないでしょうか。共同研究の態様は一様ではないので、万能と言えるような共同研究契約の雛形は用意しにくいと思っていましたが、「さくらツール」の登場により、大学側が提示する共同研究契約書雛形から出発するだけではなく、また、研究成果の知的財産の帰属について共有とか別途協議とかを定めるだけではない多様な契約交渉の進め方が期待できると思います。
英国知的財産庁のLambert Toolkitが、2005年に公表された後、2013年に検証報告書が出され、2016年にLambert 2として増補されたように、「さくらツール」も検証や必要に応じた改訂がなされ、長く参照されるようになって欲しいものです。